現在日本中どの地域の田畑でも連作に次ぐ連作で土壌は疲弊し、農作物は連作障害を始め様々な病虫害に侵されています。中には農薬を施しても駆除できない病虫害さえ発生してきている深刻な状況にあります。

これらの問題を解決する手段として化学分析を行い、その結果にもとづき欠乏したものを投入したり、発生した病虫害にはより強い農薬を散布するという方法を用いていますが、連作障害や病虫害の問題はいまだに解決されていないのが現状です。
それどころか化学分析にもとづき投入したはずの資材が土壌中に残留し、逆に農作物に悪影響を及ぼすことさえあります。

植物は大地、水、光、微生物等の相互作用により成り立っています。農業の抱える問題を解決するにはこれらの相互作用を理解しなければなりません。

そこで当研究所では、従来の化学分析に加え、土壌硬度計による物理性の測定や土壌微生物の菌相分布の測定を行うことにより、土壌や植物の状態を総合的に評価します。またこれらの分析結果を一時期だけ考慮するのではなく、継続的に分析することで根本的な解決方法が見つかるはずです。

下の表はきゅうり施設栽培約200名の土壌分析の平均値(収穫終了後)です(同一地域)。ECが高くpHが低い典型的な窒素過剰の土壌です。またリン酸や石灰も非常に高い濃度で残留しています。

毎年勉強会を開き、過剰な肥料分の投入を控えることにより2009年には表の右のように窒素分と石灰やリン酸を減らすことができました。
10%以上削減できた項目はEC・石灰飽和度・リン酸・アンモニア態窒素・硝酸態窒素で、これは土壌分析を繰り返し行うことによって生産者の意識が少しずつ変化してきた結果です。まだまだ改良すべき点は多いですが、方向性は間違っていないと確信しています。

生産者の中には「肥料分が多いことはわかっているが、今までの経験で無施肥は怖いけれど、思い切って無施肥でやってみたら問題なく収穫でき、さらに年々茎が太く、葉が小さい良い木姿のきゅうりになった」と喜んでいる方もでてきています。

持続的に生産可能な土壌を如何に作るかが今とても重要とされている中、基本となる土壌分析を継続的に行うことによって現状を把握し、処方箋を書くことができます。

このような取り組みをこれからもますます発展させていきます。

2005年 2009年 増減率%
EC (mS/cm) 0.93 0.76 -18
pH 5.9 6.3 +6
CEC (meq/100g) 22 23 +4
CaO (mg/100g) 480 470 -3
MgO (mg/100g) 96 110 +17
K2O (mg/100g) 130 140 +8
石灰飽和度 (%) 82 73 -10
苦土飽和度 (%) 23 25 +7
加里飽和度 (%) 13 12 -2
塩基飽和度 (%) 117 110 -6
P2O5 (mg/100g) 440 380 -13
リン酸吸収係数 920 950 +3
NH4-N (mg/100g) 3.5 1.9 -46
NO3-N (mg/100g) 23 16 -33
腐植 (%) 4.3 4.1 -4